雨上がりの街角で見つけた紙飛行機
雨上がりの街角で見つけた紙飛行機
雨が止んだ午後、光るアスファルトに落ちていた一機の紙飛行機が、小さな奇跡と忘れかけた記憶を運んできた。
傘をたたみながら歩いていたら、歩道の端に白い折り目がひとつ見えた。近づくとそれは紙飛行機で、角は少しふやけているが形はきれいに残っていた。空気の湿りを含んで、どこか懐かしい匂いがする。
子どもの頃、紙飛行機には無限の可能性が宿っていた。遠くに飛ばすほどに、世界が広がった気がした。大人になるにつれて、飛ばし方よりも目的地を考えるようになり、紙飛行機は箱の奥へしまわれていった。
その紙飛行機を拾い上げると、掌に伝わる軽さが記憶を揺らす。誰かがここで、ほんのひとときだけ自由を願ったのだろう。近くのベンチには水たまりがきらめき、街路樹の葉からはまだ雫が落ちる。静かな午後の光景が、時間を少しだけ戻してくれた。
ふと、公園の片隅で見つけた落書きや、電車の窓に映る自分の横顔と重なって、日常の細部が物語に変わる瞬間がある。紙飛行機はそれ自体が物語の終わりと始まりを同時に示していて、拾った人間次第で別の軌跡を描く。
その場で折り直すことにした。指先で慎重に折り目を整え、最後に軽く息を吹きかけてから腕を振る。紙は空気を受け、予想外の方向へふわりと舞い上がった。遠ざかる影を見つめながら、気づけば自分の肩の力が抜けていた。
紙飛行機は小さな象徴だ。すぐには帰ってこないかもしれないけれど、投げた瞬間に何かが変わる。忘れていた感情や、今後の小さな決意が風に乗って飛んでいく。雨上がりの街角で見つけたその白い一機は、誰かの物語を乗せてまだどこかを旅している。
最終更新: 2025-11-28
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