夜の散歩で見つけた小さな灯り


夜の散歩で見つけた小さな灯り

都会の喧騒を抜け出してふと立ち止まると、小さな灯りがいつもの景色を優しく塗り替えた。


仕事帰りの足取りはいつもより少し重く、スマートフォンの画面だけが明るく瞬いていた。そんなとき、路地の奥にぽつんと灯る小さなランプが目に入った。特別ではない、古ぼけたガラスと細い金属の支え。だが、その光は周囲の陰影を撫でるように柔らかく、思わず足を止めさせた。

灯りのそばには自転車が一台、新聞が束ねられたまま置かれている。誰かの生活の痕跡が、夜の冷たさを少し和らげているようだった。遠くの車の音や自動販売機の明滅と比べると、その光はとても小さく、それが逆に目を引いた。

記憶は滑らかに過去へと触れてくる。子どものころ、夜道で見つけた同じような灯りに安心した感覚。家路を確かめるための目印でもあり、誰かがここにいるという証でもあった。大きな出来事はなくとも、こうした小さな瞬間が心をつなぎ直してくれる。

日常はしばしば音と情報で満ちているが、意識を手放して歩いてみると、小さな光や匂い、風の向きが別の景色を見せてくれる。夜の散歩には、予定調和を壊す余白がある。急ぐのをやめて、その余白に身を委ねれば、見落としていた美しさが戻ってくる。

あなたの近所にも、そんな小さな灯りが今夜きっとある。立ち止まってみることで、見慣れた道が少しだけ優しく見えるはずだ。


最終更新: 2025-11-27

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