物価高の時代に「主食としての米」を守るための、小さなコメ戦略
コメの価格が高止まりし、新米の季節になっても値段を見て一瞬ためらうことが増えている。
五穀豊穣を大切にしてきた国のはずなのに、主食のコメですら気軽に楽しめない状況は、どこか文化そのものを削られているようにも感じられる。
とはいえ、まだ完全に米文化を手放すつもりはない。
日々の食卓を維持しつつ、ささやかな「コメ戦略」で主食を守ろうとしている人もいる。
7月の早場米から始まる「コメのポートフォリオ」
今年のコメ生活は、まず早場米から始まった。
- 7月:宮崎産コシヒカリ
- 同じく千葉産コシヒカリ
この2つの早場米で新米シーズンの口火を切りつつ、その合間に備蓄米も確保。
日常用と非常時・価格高騰時の保険を分けて考える、いわば「コメの分散投資」のような形だ。
押し銘柄ははっきりしている。
- 一押し:秋田県のサキホコレ
- 二番手:新潟の新之助
どちらも、もともと「少し贅沢なブランド米」のポジションで、味と食感には定評がある。
しかし今年は、この2銘柄の新米がなかなか姿を見せなかった。
新米の情報を待ちつつ、先に**北海道産ななつぼし(新米)**が店頭に並び、現在の主力はこのななつぼしになっている。
ようやくサキホコレと新之助の新米が出てきたタイミングで、期待しながら価格を確認してみると──
これまで購入してきた新米より、さらに一段高い価格帯に。
もともと高めの銘柄であることは承知の上だが、それでも「さすがに躊躇する」と感じるレベルまで上昇してしまった。
一人暮らしの場合、5kgの米はおよそ2か月はもつ。
単純計算で、1年に試せる銘柄は6種類ほど。
新米シーズンに「どれを選び、どこまで踏み込むか」は、もはや小さな投資判断に近い感覚になりつつある((笑)
カリフォルニア米を逃した後悔と、台湾米の手応え
今年、もう一つ心残りになっているのがカリフォルニア米だ。
店頭で見かけたときには、
「アメリカ米なら、きっと年中どこかで買えるだろう」
と油断し、ひとまず国産の新米を優先した。
ところがその後、新米へ商品が入れ替わるタイミングで、カリフォルニア米はそのまま売り切れのまま棚から消えてしまった。
「見つけたときに買っておけばよかった」という後悔だけが残る形になった。
一方で、台湾米は一度だけ試している。
- ややパサつきは感じるものの
- 炊き方や水加減を少し調整すれば、日常の食事としては十分許容範囲
という感触で、「国産以外のジャポニカ系も、工夫次第で普通に食卓に馴染む」という手応えは得られた。
その意味では、カルローズに代表されるアメリカの中粒ジャポニカ米も、実際に炊いてみれば問題なく馴染む可能性が高い。
しかし、現物がない以上、次の入荷や別ルートでの再会を待つしかないのが現状だ。
一人暮らしだからこそ考える、「ブレンドで購入金額を下げるコメ政策」
国産のブランド米も、海外のジャポニカ米も。
すべてを単一銘柄で豪快に食べ比べるには、物価高のハードルがかなり高くなってきた。
そこで登場するのが、
「ブレンドで購入金額を下げるコメ政策」
という、半分冗談のようで実際はかなり合理的なやり方である((笑)
ベース米とアクセント米を分ける
- ベース米
- ななつぼし、早場の国産コシヒカリ、備蓄米、台湾米 など
- 比較的手ごろで、量を安定して確保しやすい銘柄
- アクセント米
- サキホコレ、新之助、(入手できれば)カリフォルニア米など
- 味や香り、食感に特徴があり、「今日は少し贅沢したい」という日に存在感を発揮する銘柄
この2種類を混ぜて炊くことで、
- 味と満足感は上げつつ
- 1合あたりのコストは抑える
というバランスを目指すことができる。
ブレンド比率の一例
たとえば、次のような比率が考えられる。
- コスト重視・日常使い:
- アクセント米:2〜3割
- ベース米:7〜8割
- ちょっとご褒美を意識する日:
- アクセント米:5割
- ベース米:5割
この程度でも、香り・甘み・食感は単一のベース米とは明らかに変わってくる。
「高級銘柄100%」ほどのインパクトはなくても、
**“価格はミドル、体感はリッチ寄り”**くらいのところには十分届く。
コメを諦めないための、小さな工夫
コメの値段が上がり続ける状況は、家計にも気持ちにもじわじわと負担をかけてくる。
好きなブランド米の新米を前にして、価格を見た瞬間に固まってしまうことも少なくない。
それでも、
- 早場米で季節を感じ
- 備蓄米で安心を確保し
- サキホコレや新之助を“年に数回のご褒美”として位置づけ
- 台湾米や、いずれ再チャレンジする米国米も選択肢に入れ
- 複数銘柄をブレンドして、味とコストの折り合いをつける
といった工夫を重ねれば、
主食としてのコメを、まだしばらくは現実的な範囲で楽しみ続けることができる。
一人暮らしなら、5kgでおよそ2か月。
1年で試せる銘柄は6種類前後──その限られた「枠」をどう使うかは、もはや小さなポートフォリオ運用に近い。
物価高の波に翻弄されながらも、
それでもなおコメをおいしく食べるための工夫を続けること自体が、
ささやかな食文化の防衛線になっているのかもしれない。
